大田区発の地域包括ケアシステム-おおた地域見守りネットワーク(みま~も)

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2009.12.15合い言葉は「やってみましょうよ!」
  •  朝10時30分。私は川崎市の「向ヶ丘遊園駅」に降り立った。そこで、NRE大森弥生ハイツ施設長Kさんと待ち合わせ、多摩区役所へ!
     K施設長は、私が、「きっと場所など調べてこないだろう・・・」という予測のもと、携帯で多摩区役所までの道を詳細に調べてきていて、私の常に半歩前を歩いてくれていました。(でも、結局多少間違えてしまいましたね、Kさん!)
     区役所に着くと、そこには、東京都健康長寿医療センター研究員Nさんが、方向音痴の私を心配するように、区役所の玄関前まで迎えに来てくれていました。なぜか、最近、あらゆる人たちに見守られている私です 苦笑
     今日は、研究員Nさんから「会わせたい人がいる・・・」と連絡があり、遥々川崎市多摩区にやってきたのでした。
     会わせたい人とは、川崎市宮前区野川を拠点に活動している「ボランティアグループ すずの会」の代表 鈴木恵子さん。
     東京都健康長寿医療センターで、Nさんが所属する研究チームが、「介入研究」の一貫として行っている「シニア世代のすこやか・安心ネットワークづくり」の検討会で、鈴木さんが講師を行うことになり、その場に同席させてもらったのです。
     この「シニア世代のすこやか・安心ネットワークづくり」検討会は、地域住民が多摩区内の公園で、定期的に体操をおこなっていて、そのお世話役のボランティアの皆さんに、研究チームが介入することで独居高齢者への見守りの意識を持ってもらおうという試みです。
     ボランティアの皆さんは、最初は、「見守り」の意識はあまりなく、自分の健康づくりを目的に関わりだした方々。介入も1年以上たち、最近は見守りの目を少しずつ持ち始めました・・・。
     このような方を対象としたセミナーです。
     この人たちにすずの会の鈴木さんはこう話しかけます・・・。
     「私たちの会の合言葉は 『やってみましょうよ!』 みんなができることをやれるような仕組みづくりをいつも考えています。つらかったり、『やらされている』と感じるような活動は長続きしません。参加している人たちは、私によく笑顔でこう言います・・・。『鈴木さんにはいつもだまされる きゃー! 』 そう、それでいいんです・・・」
     講演が終わった後、参加者たちからの質問の手が引っ切り無しに挙がる。
     「まずは感動と、感銘をしております!鈴木さんは、この活動をやられる前は何をしていたんですか?」
    → 「主婦です!だからできたんです!生活に根ざしていなければ、地域のことは見えてきません!」
     「会の会則とかはあるんですか?」
    → 「ずっとなかったんです。でも、助成を受けるためには、この会則とかいうものが必要で、仕方なく作りました」
     「用紙何枚ぐらいの内容のものですか?」
    → 「1枚です!」
     「鈴木さんがいなくなった後、誰か引き継いでくれる人はいるんですか?」
    → 「実際に、倒れた時は何度もありました。その時は、すべてほかのメンバーがやってくれました!」
     「どうか、いなくならないでください!体には十分気をつけて・・・」
     終わった後も参加者の人たちが鈴木さんを取り囲む・・・。
     
     自分の健康づくりを目的に関わりだしたはずの方々が、いつのまにか、この地域でどう高齢者の見守り活動を行っていくか・・・、主体となって鈴木さんに質問をしている。
     この変化の最初から最後までを目の当たりにしていて、鳥肌が立つようでした。
     鈴木さんの姿勢には、参加している人たちを、「お客さんとか、やってもらう人」という発想がこれっぽっちもない。地域のことを一緒に考え、活動を一緒に創りあう人 。その意味でまったく対等なんです。
     鈴木さんの姿勢に貫かれているものに触れて、自分の発想の未熟さと、地域をみつめる視点のちがいに愕然としました。それでいて、新たな力が湧いてきたのも事実です。
     参加した人たちが帰った後、東京都健康長寿医療センターの皆さんと、私たちに、あるDVDを見せてくれました・・・。そこには、認知症の母親と、たった一人で介護している息子の写真が、カーペンターズの音楽に合わせて次から次へと流れていきます。
     いつも一緒にいる親子、認知症の母親を介護するために仕事を辞めた息子。介護を一人で背負う息子に、そっと手がさしのべられた・・・、それが「すずの会」。
     地域から孤立していくのには、十分な条件がそろっていたこの親子。息子は「すずの会」の男組に関わっていく。介護疲労がたまると、同じ介護をしている人の家へ行き、くつろがせてもらう。介護をしている人の家は、自分と同じように家を開けられず、必ず家にいるから都合がいい。ついでに愚痴も聞いてもらう。
     この親子の写真が、5分ぐらい延々と流れるDVD。説明の文字も、ナレーションもない。ただ、カーペンターズの音楽が流れるだけ。しかし見る人たちに何かを訴えかける。
     写真は鈴木さんが撮影し、編集を引き受けたのは、この息子さんだそうです。
     鈴木さんに何を言われたわけでもなく、何かの答えを教えてもらったわけでもありません。でも、これからの「おおた高齢者見守りネットワーク」を広げるうえでの大切な指針をもらったような気がします。
     研究所のNさん、H先生、そして、「すずの会」の鈴木さん、貴重な機会をありがとうございました。 
      
    すずの会のホームページは、こちらをクリックしてください。
      
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