電話が鳴り、私が受話器を取ると、電話の主は、久しぶりのAさんからでした・・・。
Aさんの電話での最初の言葉はいつも決まっている。
「おはよう!人の言葉を聞きたくて電話したの・・・。人と1日1回は話さないと、人間の言葉を忘れてしまうから・・・」
Aさんは、秋に無事新居が決まり、新しい生活を始めている。
Aさんは生活保護受給者で一人暮らしの女性。幼少のころから山王の地域で暮らし続けている。他人との交流が煩わしいと、人づき合いは全くない。それでいて、たまに人恋しくなり、包括支援センターに電話をかけてきては、職員とひとしきり話をして、安心すると電話を切る・・・。
Aさんは、包括職員にあだ名をつけて呼んでいる。私は昨年までは「ブラック!」(なぜだかはいまだに不明???)、今年になってある時期からはいつのまにか「オバマ!」(やはり不明?ちなみに私、どちらかというと色白です!)になっている・・・。
Aさんの転居までのことを書いたブログ記事はこちらです。
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「包括家さがし月間」のブログ記事はこちらです。
久しぶりのAさんからの電話は、転居後の報告から始まった。
「オバマ~、最近、
私・・・、変! 」
「じつは同じ階の人に好かれてるみたいなの・・・。だってね、毎日三食手料理を持ってきてくれるのよ!
福島の人らしいんだけど、この前は柿が届いたからって、持ってきてくれるし・・・。
その前はね、100円ショップでホッカイロ買ったらしくって、一人じゃ使いきれないからっていくつかくれたの。外に行く時あったかいよって。」
私 : 「いいじゃないですかぁ~、友だちが出来たってことでしょ!」
「よくないわよぉ~!この家の住人はね、一言でいえば下町風なの。私は生まれてこの方、山王の山の手育ちでしょ。だから人づき合いって苦手だし、煩わしいのよぉ~!」と、まんざらでもない様子。
(この後も、私のことなどお構いなしで話し続けるAさん)
「この人の料理はね、手作りの味がして、まぁそれはそれでまずくはないんだけどね。さすがに三食はどうかと思うのよぉ~。
三食よ!三食!断らなくていいのかしらねぇ~???そりゃぁ、ちゃんと食器返す時、美味しかったって言って返してるわよ!それぐらいの近所づきあいぐらい、私だって心得ているわよぉ~、オバマ~!」(まだまだ続くAさんの話し)
「私のこと、妹のように思っているのかしらね。でも、どう見ても私の方が年上よ!どこが気に入ったのかしら?」(そろそろ私の意見を聞いてくる頃かな?)
「・・・・( しばらく沈黙 )・・・、オバマァ~、私、今までこんな風な人づき合いしたことないからわからないんだけど、これからも来るものを拒まず、やりとりしていいのかなぁ~???」(やっぱりきた!)
私 : 「人が自分のことを気にしてくれているって、うれしいことじゃないですかぁ~!Aさんはどう思うの?」
するとAさん、「まぁ、悪い気はしないわよねぇ~。」
私 : 「じゃぁ、その人のしてあげたいという気持ち受け取っといていいんじゃない?その人も一人暮しなんでしょ、何かあったら、今度はAさんが何かしてあげればいいんだから!」
すると、Aさんうれしそうに・・・「そぉ~~!
オバマがそういうんだったら、近所づきあいというのをしばらく続けてみるわ!まったく、下町気質ってとまどうわよね。こんなことなら、前から少しづつやっとけばよかった・・・」
「あらっ、オバマ忙しいのよね。長電話しちゃったわ。じゃあね
」
さっと来て、さっと過ぎ去った電話でした
近所に自分を気にしてくれている人がいる ・・・。この安心感は、私たちには本当の意味で理解はできていないのかもしれない。でもAさんのうれしさは、そのまま自分もうれしいと心から感じました。
何十年もの間住み慣れた場所を離れ、新しい場所での新しい生活が始まったAさん。新生活に希望など持てず、不安と今まで以上の孤独感でいっぱいだったAさんの新生活に、一見、お節介と感じるほど、言葉は悪いが強引に入ってきた隣人。
でも・・・と思う。これほどお節介でなければ、長年孤独とともに、人を疑いながら生きてきたAさんの心の中に、暖かいものと一緒に入り込むことはできなかったでしょう・・・。
人に手をさしのべる・・・・。「お節介!」と、もし怒られたら謝ればいい。そして、また、手をさしのべる。本当の人の心に触れる暖かさは、「一般常識」というものから多少はずれた所にあるのかもしれない・・・。
Aさんと、この近隣の人との関係が、このままうまく続くのかはわからない。ただ、今の時点ではまちがいなく、Aさんの心の中に、見えない何かを灯したのだけは確かです!
私たちが働く都会でも、少し歩くと、このような景色に出くわすんですよね・・・。
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