今から7年前のブログ記事。
このようなできごとの経験が、私たちの地域包括支援センターがみま~もを取り組んでいる原点です。
ちなみに、「絵描きナース」とは、今は仙台にいるわが地域包括支援センタ-永久欠番職員のHさん。
「要支援1」一人暮らしのMさん。夫とは離婚、二人に子どもはなく親族は姪のみ。
週1回利用していたデイケアから連絡が入る。
「休むときにMさんから連絡がなかったことはない、何かあったのでは???」
ケアマネージャーも、デイケア相談員の連絡に呼応する。
「Mさんが休むときに連絡をしないのはおかしい!」
Mさんが話していたことを思い出す。
「ほとんどの用事を午前中に済ませて、疲労が出てくる午後にはなるべく外出しないようにしているの・・・」
「夕方に連絡をして、それでも電話に出ないようだったら、管理人さんに鍵を開けてもらって部屋を確認しよう」ケアマネージャーにそう伝えた。
「デイケアの日を忘れてきっとどこかに出かけているんだ!そうに決まっている!」
夕方、電話をしたがやはりMさんは電話に出ない・・・・。
「取り越し苦労であってくれっ!」
自分にそう言い聞かせながら、一足先にMさん宅に向かった絵描きナースを追いかけた・・・。
一人暮らしのMさんは、家にいるときには必ずチェーンをしていた。
しかし、この日だけはチェーンをしていなかった。管理人さんに事情を説明するとカギを開けてくれ、中に入ることができた。私たちが玄関から入れるように気づかっていたのでしょうか・・・?
家の中へ入る。
たたんで整えられている布団、きちんと洗われた茶碗、仏壇には菓子パンが置かれている。
和室の端には、Mさんが最期の買い物をした、土曜日の日付が刻まれているレシートが下敷きに挟んで並んでいる・・・。
整理整頓が隅々まで行き届いた部屋・・・・。
それだけに、脱ぎ捨てるように置いてある、着物やコルセットが嫌でも視界に入る・・・。
「何か感じませんか?Mさんはこの部屋にいると思いませんか?」私を見つめる絵描きナースからの声にならない言葉が聞こえました。
灯りがついているトイレを開ける・・・。良かった・・・・。そこにはMさんの姿はなかった。
「やっぱり外出してるんだ。電気がついてないお風呂場にはいるはずがない」
お風呂場の扉を開けた・・・。
洗い場に倒れているMさんがそこにいた・・・。
「絵描きナース!」
絵描きナースが押さえる腕には、脈打つ様子はなかった・・・・。
「今日はデイケア利用日。連絡をしなければきっと、あなたたちのことだからきっと気づいてくれるでしょう・・・」(^_^) Mさんの声が聞こえてくるようです。
ケアマネージャーやヘルパーに常日頃、
「自分がどうなろうと、あなたたちには迷惑をかけないからね」と話していたMさん。
Mさんはこんな最期まで心配りをしてくれていたんでは・・・、と思わず感じてしまう。
遺体が運ばれて行き、Mさんの部屋で見つかった鍵で警察官が戸締りをする。
「澤登さん、あれっ!」
警察官が持っているMさんの鍵には、「おおた高齢者見守りネットワーク」で取り組んでいるSOSキーホルダーがついていた。
先月でしょうか・・・?SOSキーホルダー登録のために事務所に訪れたMさん。
登録が終わり、自宅の鍵にキーホルダーを付けたいが力が入らず、私が鍵に付けてあげたのでした。
「これで安心!何があっても大丈夫ね!」(^_^)
うれしそうに私にこう話してくれたMさんの笑顔を思い出す・・・。
要支援となり外出も減り、近隣とのつながりも減っていたMさんだったが、介護サービスでつながった専門職たちとのつながりを保ち、一人暮らしの自分に万が一何かあったとしても、数日中には我が身の異変を伝えることのできる術をきちんと整えていたのだ。
専門職である自分の無力さが大波のように襲いかかってくる。無念の想いが駆け巡る。
「これ以上は何もできない。仕方のないこと・・・」自分を言いくるめることはいかようにもできる。
でも、今回だけは、専門職である自分の無力さをすべて被りたい。この無念さを自分のエネルギーに変えたい・・・。
自分を知ってくれている、いつも気にしてくれている、手をさしのべてくれているという存在の心強さを改めて感じている・・・。
それは家族・親族とは限らない。手をさしのべてくれるのは、手が届くところにいる人。手をさしのべられるのは地域でしかできない。
この想いを、強く強く感じている。
Mさんの最期の姿が今も目に焼き付いている。自分を奮い立たせよう。今、感じている様々な想いを心に刻もう。何も大きなことを言うつもりはない。
せめて、自分が働くこの地域だけは、一人暮らし高齢者を気にしている、隣近所で声をかけあっている。
そして、私たち専門職に、高齢者の異変、気づきが早い段階で届く。
そんな本当の意味でのあたたかい地域ぐるみのつながりを築いていくことを誓いたい。