ある当院関係者からの紹介で、わが地域包括支援センターに一人の女性Aさんが私を訪ねてきた・・・。
60代後半から70代前半だと思われるこの女性は、ご主人のことで相談に来たのだという。
しばし話しをすると、おもむろに持ってきたカバンから雑誌らしきものを取り出した。
「これを何度も読んで決心したんです!もう一度、一緒に暮らそうって!」
私に見せてくれたものは、1年前にみま~もが発刊した
「フリーペーパーみま~も 第2号 」だった。
認知症が進行。当初、自宅にてデイサービスなどを利用して介護を行っていたが、デイサービス利用中まわりの利用者に激高することがしばしば・・・。事業所から利用を断られてしまう。
自宅での介護に限界を感じ、車で1時間ほどのグループホームへの入所を決める。
グループホーム入所後、ご主人も施設での生活に慣れ、Aさんもやっと一安心。
定期的に施設に訪れてはご主人と車でドライブに出かける心のゆとりを持てるようになった。
しかしご主人の認知症の進行は早く、現在はほぼ寝たきりの状態でグループホームでの生活を続けている。
Aさんは、ご主人がこのような状態になった今、住み慣れた自宅での介護を選択した。
本人の意思を聴くことは今の段階では難しい。ただ、
「主人もそれを望んでいるでしょう」とAさんはきっぱり言う。
認知症と気づいたのは診断を言い渡された時。今振り返れば、温厚な性格だったご主人が急に怒りっぽくなり、孫に手を振り上げようとしたりと前兆があった。でも、当時のAさんには、「認知症?」と気づくことができる情報がなかった。
認知症の診断を受けてから、考える時間も、選択する猶予もなく、在宅での介護から介護疲労の末に施設入所。
皮肉にも施設に入所してから、改めてゆっくりこれからを考えたAさんの今現在の答えが「在宅」だったのです。
このAさんの意志決定に良いも悪いもない。もちろん正解も誤りもない。
今、Aさんは自宅での介護に向けて、わが包括支援センターリーダーたぐナースとケアマネジャーと準備を進めている。
もちろんグループホーム側とも話し合い、まずは外泊という形で介護を始めていくこととなる。
介護を始めた数年前と今、Aさんの中での大きな違いは、ご主人を誰よりも知る自分がご主人とともに、これからを決めているという
実感であろう。
今日もAさんは、たぐナースとケアマネジャーとこれからの打ち合わせのため事務所にやってきた。
話し合いの中で、時折笑い声が聞こえてくる。きっと、
「これでいい」という計画が立てられたのだろう (*^_^*)
ふっと、地域包括ケアの「植木鉢」の図が頭をよぎる。
「フリーペーパーみま~も」がきっかけで私たちとつながったAさん夫妻。本人の選択と本人・家族の心構えを大切に、寄り添っていきたいと思っている。
地域包括ケアシステムの「植木鉢」
(出所:2015年度地域包括ケア研究会報告書 http://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/houkatsu_01.html)
Aさんがずっと大事に持ち続けていた
「フリーペーパーみま~も 第2号」~ 在宅療養は今後の重要な選択肢 ~
の記事は、こちらからご覧になれます。
↓
http://mima-mo.main.jp/mimamofrypaperp25.pdf

