住民に「気づき」の意義を周知する
地域づくりセミナーは地域住民が、地域の医療・福祉の専門家や警察・消防などの機関から、地域全体での見守りの重要性や「気づき」の視点について学ぶことを目的として、
「みま~も」発足当初から続く取り組みです。
その目的から参加者として想定していたのは、高齢者本人というより、どちらかと言うと見守ってあげるというボランティア意識のある比較的若い方たちや民生委員などでした。
ところが、実際の参加者は、70歳代が最も多く続く80歳代と合わせると7割を占めていました。
この年齢層は、一見して「見守られる」立場の方たちですが、「自分の将来のために…」を大前提としながらも、「互いに見守る」という意識も持って参加していることがわかったのです。
まずは、動き出すことで、参加者(=住民)が何を求めているのかを知り、その段階で柔軟に対応することが、それが取り組みを継続していくための最も重要なポイントです。
私たち「みま~も」の地域づくりセミナーの目的も、当初は比較的若い支援者を想定した「地域で高齢者見守る気づきの視点の提供」でしたが、参加する多くが高齢者自身であったという現実から、「住民と地域の専門職とが顔の見える関係を築いておく、あるいは元気なうちから地域包括支援センターや専門職の存在を知っておくことを促し、いざというときに相談をしやすい環境をつくる」という目的を追加していきました。
年齢的には一見、見守られる立場の方々が、どこかで地域づくりセミナーの存在を知り、参加者の数が30名から50名に、50名が100名に…と次第に増え、現在では130名以上の方が、「互いに見守る」地域を目指し、継続して参加してくれています。
テーマの決め方、講師の選び方 - とことん地域密着
セミナーの講師、日程、内容については、年度単位で決めて、あらかじめ参加者に伝えるようにしています。年間を通してどのようなことを行っているかを知ってもらうためです。
講師は、どこぞの話し上手な専門家を選ぶようなことは敢えてしません。
「みま~も」が取り組んでいるセミナーの講師陣は、「みま~も」の賛助会員事業所の専門職や地元の専門機関の方々と決めており、とことん地域密着の専門職に依頼しています。
「セミナーで講演する人や会場にいるスタッフは全員、この地域の専門家。つまり、何かあったときに私たちを支えてくれる人。その専門家がこの地域に暮らす自分に話してくれている。私に何かあっても、この人たちが支えてくれる」
参加者がこう感じていることこそが、地域に暮らす人たちの安心につながるのです。
地域の専門職同士のネットワーク構築の機会
地域づくりセミナーは「みま~も」の賛助会員事業所が月々交代で、講師との連絡・打ち合わせを行って、
当日の仕切り・司会・毎月の会議の議事進行を行うようにしました。
そのような輪番にすることで、それまで顔見知り程度に過ぎなかった事業所同士が密に連絡を取り合うようになり、そこにまた新しいつながりができ上がっていくのです。
そして「みま~も」の賛助会員メンバーと、講師との間に達成感とともに、今後の専門機関、専門職同士の連携も育まれます。
これこそが、「みま~も」がこの地域で行う多職種連携、医療・保健・福祉連携、専門機関間連携のネットワークづくりです。
セミナーを通して高齢者の安心を築く
地域づくりセミナーを継続する中で、セミナーの開始前や終了後に、「みま~も」に関わる専門職が参加者からの相談に乗ることが多くなりました。
地域で暮らす高齢者は、このセミナーに参加する中で、ここにいる関係者は、みんなこの地域の専門家で、何かあったら気軽に相談できることを知っています。この実感は、地域に暮らす高齢者の人たちにとって、何より「安心」なのではないでしょうか。
私たち医療・保健・福祉専門職は、地域住民にとって医療や介護が必要になってはじめて出会う存在ですが、元気なうちから地域住民と関わることで、専門職として本来の専門性を発揮でき、地域住民は安心して暮らすことができると考えています。
医療・保健・福祉専門職が目指すべきものは、住民同士、専門職同士、住民と専門職のような、縦横に張り巡らせたネットワークのある地域をつくることではないでしょうか。