児童演劇の仕事をしていた頃、一人の歌手、ひとつの音楽に出会った・・・・。
『 横井久美子さん 』
そして、彼女が歌うアイルランド民謡
『 私の愛した街 』
「なんて美しいメロディー・・・・」
そして、「哀しげで、それでいて、わが故郷に対する、とめどない愛情が注がれた歌なんだろう・・・・」
当時大学生だった私は、この曲を聴いてまわりにおかまいなしに涙があふれ、そして、身体中がなぜかあたたかいものに包まれるような気がした・・・。
後になって、この歌が作られた当時のアイルランドの時代背景、そして、この歌に込められたアイルランドの人たちの思いを知った。
アイルランドは17世紀以降、イギリスの植民地だったこと。
1968年、イギリスの支配に反対する公民権運動が起こったこと。
1972年1月、イギリスの軍がこれに介入、この時、多くの人々が殺され、デリ-の街は焼かれたこと。
そして、この曲は、その時のことを歌っていることを・・・。
どこの国だろうが・・・、どこの街だろうが・・・、どんな人だって・・・、自分が愛する街がある。
それは、自分が生まれ、育ち、青春を過ごした街、そして、愛する人がいる街。
今、自分がいるこの地で、愛する人が亡くなり、自分が過ごした街がガレキとなり、自分の歩んできた道程が、思い出が消えていく・・・・。
この思いは、自分が引き裂かれるような痛みでしょう。
それでも、人は絶望せず、「この出来事を決して忘れるまい!」と、瞳をひらき、前に進んでいくんです・・・。
震災から1ヶ月・・・。
ふっと、この歌を初めて聴いたときを思い出し、紹介させていただきました。
『 私の愛した街 』 訳詩 : 横井 久美子
1.想い出の中にいつまでも 生き続けるわたしの街
煙くて臭いガス工場(こうば) 笑いころげて遊んだ
雨の中 夕べの道 走って帰ったものだよ
刑務所の脇をとおり 共同井戸の我が家
2.シャツ工場(こうば)のサイレンが鳴って 女たちを呼び寄せる
失業中の男たちが 母親代わりの毎日
景気が悪くて 鍋は空っぽ それでも愚痴も 言わずに
だってみんな心の奥では この町を誇っていた
3.小さなバンドで歌をうたって あの日はじめて お金を稼いだ
音楽にあふれたデリ-の町 とても忘れられない
それをみんな 置き去りにして 町を去るなんてつらい
だってそこは 人生を知り 夫を 知った町
4.こんど帰って 目を疑った 酒場は焼け 煙が舞い
なつかしいガス工場には 兵隊がたむろしていた
鉄条網が はりめぐらされ 戦車と銃剣の街に
軍隊の前に ひざまずいた わたしが愛した街
5.今ではもう音楽もない でも町の人は絶望してない
忘れはしない この出来事を まなざしが語っている
わたしにできることは一つ 戦うことだけなのだ
青春を過ごしたデリ-の街 わたしの愛した街
フィル・コールターが歌う 『 The Town I Loved So Well 』(私の愛した街)。横井さんが歌うこの歌の原曲です。映し出される風景がこの曲の内容をほぼそのまま写し出しています。
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