文化・芸術に関わって仕事をしてきた
端くれ として、特に最近感じていることがあります。
それは、科学がどんなに発達し、物があふれても、それで私たちが豊かになるかというと、決してそうではないということ。
「豊かさとは何か?」それは、文化と深く関わっているのだと思います。
文化といっても、単に舞台干渉や演劇鑑賞等の狭義のものを言っているのではありません。
人と人との交流、日常の生活から生まれた
普遍的 なものとでも言いましょうか・・・。地域の中で育まれてきた、となり近所つき合いの関係も
文化そのものでしょう。
日本という国には、独特の素晴らしい文化があります。これは、長い歴史と風土の中で培われた、私たちが世界に誇れる文化です。
この文化の中の芸術分野として、歌舞伎・能・狂言・落語等などが挙げられると思いますが、広義の「文化」とは、そこで生活している人たちの暮らし、その暮らしの中で大切に引き継がれてきた生活様式そのものなのです。
日常生活の中で、衣食住が満たされているというだけで、私たちはすべてが満ち足りているとは感じることができません。そこに豊かさが必要になってきます。ここで私がいう豊かさとは、「人間の心の豊かさ」です。
経済や、政治や、物の価値が、目まぐるしく変化する今の社会です。この目まぐるしい社会の中で生活している私たちも、ともすればこの目まぐるしさの中で、本来大切なものを失ってしまっていることも多いように感じます。
私たちの仕事もそう・・・、目先の制度や決まりにとらわれ、関わるべき対象者を自分の狭い領域の中で判断し、その方の人生の豊かさには目を閉ざしてしまう・・・。
しかし、現行の制度を考えてごらんなさい。介護保険制度だって導入されてたった8年。その中で、解釈や制度の改正がよくも悪くも、これだけ変わっているんです。
私たち専門職は、今ある解釈や制度を絶対的なものとしてとらえるべきではありません。
このように目の前の制度や決まりを不動のものという薄っぺらい認識でいる専門職は、対象者の「人生の豊かさとは」という生きていく上での大切なその人の指針を見つめる、見つけることはできません。
私たちは、今、専門職として働いている一人として、何年か先、何十年か先をみつめ、どんなに年齢を重ねても、人間としての心の豊かさを決して奪うことのない、社会制度の土台を築く責任があるんです。
偽善者ぶっているつもりはさらさらありません。ただ、このように考えて、気概を持って専門職として働いている自分でいるほうが、対象者と真正面に向き合える専門職としての自分でいられるような気がするんです。
心の豊かさの大切な中身は、社会・人間についての科学的な「知力」だと思います。私たち専門職の学びの第一は、そのような「心の豊かさを獲得する」ことではないでしょうか・・・。
認識における自己の視野の狭さと、感情における他者との共感能力の欠如は一体のものです。だからこそ、私たち専門職は、「心の豊かさを獲得する」学びを怠ってはいけないんです。
それが人の心に働きかける専門職の、最低限失ってはいけない役目ですし、だからこそ、やりがいのある仕事なのではないでしょうか・・・。
時代がどんなに目まぐるしく変わろうとも、人間にとって大事なものは変わらないんです。そして、それが文化なんです。