映画『おくりびと』がアカデミー賞を受賞。日本の中でもあの映画に共感した人は多いが、実際にどのように感じたのでしょう・・・・。
生命の火が消えかかる・・・、家族・親族が病院に集まり、ご本人の最期を見届ける・・・。
そして、生命の火が消える。悲しみに暮れる家族に変わり、地域の人たちが代わる代わる訪れ、来客を出迎える。通夜、葬儀用のつまみものの準備を、女衆が取り仕切る。
ご本人とのお別れに多くのおくりびとが集まる・・・。少し前まであった普通の光景が、少子高齢化により、特に大都市では滅亡している。
ひとり暮らし高齢者が誰にも気づかれずに亡くなり、死後、何日かたって異臭等により発見される。残された遺品の引き取り手もなく、遺品片付け業者が大家の依頼により入り、淡々と、手際よく廃棄していく。
今、こういった遺品片付け業者が大忙し!中には、本人からの予約も入るそうです。
世界中で大きな反響を呼んだ「おくりびと」・・・。日本の風土、風習が、長い年月の中で培われてきた葬送の文化が崩壊している。
長い年月をかけて創りあげてきた文化は、一度崩れてしまうと、また築き上げていくことは難しい・・・。看取りの文化が崩壊しているところに、制度としての「看取り」を持ち込んでも現場も家族も混乱するだけではないでしょうか?
療養病床の削減・廃止が、医療財源の問題からわき上がり、在宅医療、介護保険施設での医療体制の整備が叫ばれた。
医療制度では、在宅療養支援診療所が在宅医療、ターミナル医療の要として生まれ、訪問看護、にもターミナルに関しての加算が付け加えられたが、そもそも、「終末期」、「ターミナル」、「末期」の基準が曖昧のまま、議論されていない。
しかも、療養病床廃止に伴い、入院している人たちがどうなるのか?戻る自宅に、まだ家族がいればいい・・・。しかし、療養病床に入院しているほとんどの人が、帰る家に誰もいない・・・、ひとり暮らしだから帰れない人がほとんどなんです。
この人たちが自宅に戻り、24時間安心できる介護体制をとる必要がどうしたってあります。療養病床の人たちは、ほとんどが要介護4または5の方たちです。
「療養病床の廃止!」という花火を打ち上げ、それに向けた法整備を国は推し進めているが、この受け皿となる介護保険施設の医療的ケアの充実は、連動した形では進んでいない。それどころか、介護の安心な体制を確保する(介護従事者の雇用確保において)ことに精一杯の現状です。
「おくりびと」のアカデミー賞受賞というニュースを聞きながら、一方で、医療と介護の安心を、「看取りの文化の崩壊」ということも含めて考えてしまう、今日この頃でした。
春めいてきましたね・・・。
↓