当院のケアマネージャーをやっていた頃だから、もう7年以上前のことになるのでしょう・・・。
この地域に暮らすHさん(要介護4)の担当ケアマネージャーとして関わっていた。
1ヶ月に1回の定期訪問では、ご本人とお嫁さんが、自分が行くのを楽しみにしてくれていたことを思い出します。
自宅に行き、Hさんの家を出るまで約1時間ほど・・・、笑いの途絶える暇がありませんでした。
きっとご本人とお嫁さんの人柄がそうさせていたのでしょう。
訪問した帰り際、Hさんと私が必ず交わすやり取りがありました。
私が帰る頃に訪問看護職員が入浴介助のためにやってくる。
入浴の準備ができると「Hさぁ~ん、準備ができましたぁ~!」と、看護職員からのお呼びがかかる。
この声が私の訪問終了の合図・・・・・、
なのですが!
ここからが、Hさんと私の月1回のお楽しみ
タァ~イム!
私 :
「Hさん!準備ができたみたいですよ!じゃぁ、着替えて風呂場に行きますかぁ!」 (と、腕まくりをしてみせる)
Hさん : (待ってました!とばかりに)
「ダ~メ!男性はは入れないの!」
私 :
「え~~~~~っ!今日こそはと準備してきたのにぃ~~!じゃぁ、来月ですよ!心の準備しておいてくださいね!」
Hさん :
「もう~~~~、懲りないねぇ~~~~」
こんなせりふを言って、車椅子で浴室に向かっていく。
地域包括支援センターへの異動が決まり、最後の訪問のときに、私はHさんにあるものをプレゼントしました。
それは、私の田舎山梨勝沼の桃源郷を撮影した写真です。
どこまでも澄んだ青空・・・、桃の花と菜の花の黄色が1枚の写真の中にちりばめられた、私の自信作です。
Hさんとお嫁さんは、
「大事に飾っておくわね!新天地でも、あなたらしくがんばるのよ!」 と、私を送り出してくれました。
あれから7年あまりが過ぎました・・・。
数日前、Hさんの現ケアマネージャーが事務所に訪れ、奥にいる私を呼び出した。
「沢登さんにどうしても会わせたい人がいるんです!」
玄関に出てみると、そこには7年ぶりのHさんのお嫁さんでした。
お嫁さんは、
「まぁ、元気そう!活躍は〇〇ケアマネージャーから聞いているわよ!母も元気にやってるから!あなたからもらった桃の写真覚えてる?毎年この季節になると今でも飾っているのよ!」 と、再会を喜んでくれました。
私は、事務所にわざわざ来てくださったお嫁さんに、「みま~ものキセキ!」(書籍)をプレゼントしました。
そして今日・・・、再びお嫁さんが事務所にやってきた。
私を見るなり、私の両手をぎゅっと握り、
「読んだわよ!大事で、とても素敵なことをやっているのね。大変だろうけど、これからもがんばってね!」
開口一番そう伝えてくれた。
話しを聞くと、Hさんがショートステイ先で急変し、救急車で当院に今日運ばれたのだそうです。
「Hさんの様態は?」とたずねると、私を心配させないようにと思ったのか微笑を浮かべながら、
「わからない・・・。でもあのお母さんのことだから大丈夫!忙しいときにごめんなさいね!」 と、病院に向かっていった。
病棟に連絡すると、状態はおもわしくないらしい・・・。
空いた時間に、Hさんの病室に向かった。先ほど事務所に来てくれたお嫁さん、息子さんはじめ、ご家族がそろっていた。
そこには苦しそうに目を閉じているHさんがいました・・・。
ご家族は私をHさんの方へ招いてくださり、Hさんにこう話しかける。
「お母さん!わかる!沢登さんが来てくれてるのよ!こんなに近くにいるのよ!」
続けざまに、私もHさんにこう話しました。
「 Hさん!お久しぶり!ご無沙汰していました。わかる?早く元気になってご家族が待っている家に帰ろう!
そして帰ったら今度こそ一緒にお風呂に入って体を洗うからね!」
苦しそうな表情のHさんの目が急にパッと見開いた!そして、私の方を見て微笑んでくれたように感じました・・・・。
今もHさんは、一進一退の状況です。
Hさん、絶対に、大好きな家に帰ろうね。
病院じゃぁ、冗談を言い合って思いっきり笑えないもんね。
もう一度、ご家族とケアマネージャーや看護師さんたち、そして私と・・・、家で思いっきり笑おうよ!笑いすぎて、涙が出るぐらい!
そのときまでに、面白い話しをたくさん用意しておくよ!
みま~もの5年間の武勇伝もまだ話していないよ。俺がんばったんだよ!
Hさんにはお世辞でもいいからとことん誉めてほしいな!
「よくやった、よくやった!さすが、私のケアマネージャーだっただけある!」 ってね。
心から、Hさんの回復をお祈りします。