大田区発の地域包括ケアシステム-おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)

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2012.10.17地域の輪に包まれて・・・
  • 今日は、少し長くなります・・・。
    話しは、9月15日(土)ダイシン百貨店で開催した 『大田区医療・介護・福祉フェア』当日にさかのぼる。
    イベント開始11時から、地域に暮らす多くの人たちが駆けつけてくださいました。
    開会のステージ前にはいすが用意され、みま~もサポーターの方々が開会を、今か今かと待ちわびている・・・。
    その中に、みま~もサポーターのAさんもご主人と一緒にいます。
    ご主人は、Aさんの隣りに座っているが落ち着かない様子でキョロキョロしている。そんなご主人に、まわりのサポーターの人たちがさりげなく話しかける。
    「もう始まるわよ!」、「少しあっちの方見に行ってみる?」
    Aさんも、そんなまわりの人たちの声を受け入れる。
    「お父さん、そうしなさいよ!」 
    Aさんのご主人は、アルツハイマー型認知症です。
    今からおよそ2年前・・・。
    Aさんは、わが包括支援センターの1次予防対象者を中心としたウォーキンググループに参加していました。
    毎週火曜日 朝9時 包括支援センター前に集合!そこからウォーキングにそろって出かけていきます。
    ある日、集合した人たちの輪の中にいるAさんに、いつもの元気がない・・・・。
    気になったたぐナースがAさんに声をかける。 「何かあったの?」
    するとAさんは、堰をきったように話し出す。
    ご主人の様子が最近おかしいということ。物忘れがひどく、食事を食べたことも忘れているのが気になる・・・。
    たぐナースは、Aさんに話す。
    「うちの病院、『物忘れ外来』というのを行っているから、ご主人受けさせたほうがいい!」
    Aさんは、セミナーや包括支援センターの取り組みで、日常的に関わっているたぐナースの意見に耳を傾け、すぐに受け入れる。
    「わかった、そうするわ!でも旦那が嫌がったり、何かあったらまた相談させてね」
    この件は、たぐナースから私の方に伝えられた・・・。
    数日後、ウォーキンググループが包括支援センター前に集合。そこにいた、元気のないAさんのそばに歩み寄ると、Aさんの方から私に話しかけてくれた。
    Aさん: 「センター長さん、今までいろいろとありがとうございました。たぐナースさんのアドバイスで、物忘れ外来を受診したら、やっぱり主人が認知症だということでした。
    今日ここに来たのは、これからは主人の介護で参加できなくなるので、皆さんにお別れとお礼を言いたくて・・・。
    今までありがとうございました。ずっとこれからも参加したかったのだけど、夫には私しかいないので、これからは夫の介護に専念していきます・・・。」

    私: 「今日、ここに来るのにはご主人になんて言って来たの?」
    Aさん: 「大事な用があるから出かけてくるって、〇時には戻るから待っててって・・・」
    私: 「ご主人は、約束をしてAさんが出かけても、今は家で待つことができているんですよね。
    認知症の診断が出たからと、二人でずっと家の中で過ごすよりも、Aさんがこうやってたまに外出して気分転換をして、笑顔でいることの方がご主人もうれしいんじゃないですかね。
    今日は、お別れを言うつもりでここに来てくれたんだと思いますが、私はお別れを言うつもりはありませんよ!これからもこの場にいてくださいね!」

    Aさんが決めてきたことを私は退けた。
    あれから2年・・・。
    Aさんは、今でもみま~もに関わり続けている。
    平成24年9月15日(土)11:00みま~ものイベント 『大田区医療・介護・福祉フェア!』 が始まりました!!
    みま~もサポーターの皆さん、そして、管理栄養士さとちゃんたちが中心に開催しているお食事処に、Aさん夫婦が顔を出す。
    さとちゃん考案の、「たっぷり野菜の入った冷製スープ」を購入して、ご主人が一口飲むと・・・
    「まっずぅ~~~~~~~~~~~~い  」
    「シェイクみたいな甘いものを想像していたのねきっと・・・、そう思えばたしかにまずいのかもね!」
    みま~もサポーターの一人がそう言うと、その場に笑いが起きる。
    気がつくと、その笑いの中にAさんもいた・・・。
    大変じゃないわけがない!
    ご主人の認知症は2年前よりも確実に進んでいる。でも、Aさんは一人ではない。
    地域の人たち、地域で働く専門職との日常的なかかわりの中で、認知症のご主人を支えている。
    2年前にAさん自身が決めたこと。 
    「主人の介護ができるのは私しかいない。だから自分のやりたいことはやめる。主人の介護に専念する。」
    そのまま、2年後の今を迎えたらどうなっていたのだろう・・・。
    大都市部は、近所付き合いや人間関係が希薄な傾向にあり、よほど自分で意識的に関わりを持たなければ、誰でも容易に孤立してしまう可能性はあるのです。
    Aさん夫婦も、ご主人が認知症を発症した時点で、自ら地域とのつながりを絶とうとしていた。
    しかし、元気なうちから日常的に関係があった専門職がいた。
    自らはSOSを発しなかったが、日常的なかかわりの中で「おかしい?」と気づくたぐナースがいた。
    日常的な関わりがあったからこそ、Aさんも混乱の中で、専門職の意見を受け入れることができた。
    多問題を抱え、多職種連携が必要なケースとの関わりが急増している。
    しかし、多問題が表面に出てしまってから、専門職がどうしよう、こうしようとしても限界がある。
    地域ケア会議・・・。
    方向性はいいと思います。大事なことだと思います。
    しかし、今後急増する多問題ケースを、一つひとつ検討できるような会議を、地域包括が、ケアマネが、今でさえ多忙な日々を過ごしている中で、それに加えてさらに事例検討・書類作成・・・。
    やりがいや気概を持って取り組むことができるのでしょうか?
    自治・町会、民生委員・・・。今でさえ、トップダウンであれやこれやと行政機関から多くの依頼や役割が降りてくる。
    それに加えて、またさらにこの会議が加わるのです。しかも、自治・町会、民生委員さんたちも高齢化が進んでいる。
    このような状況を踏まえた上で、地域住民がやらされ感のない、主体的で継続性のあるものでなければやらない方がまし。
    一部の専門職のやる気のある人が、行動を起こす。しかし、関わる人たちは、「やらされ感」を持ったまま関わらせられる。挙句の果ては、関わった人たちが疲弊してトーンダウン・・・。
    せっかくやる気になった専門職の人すらも、最初の意気込みはどこへやら。あきらめの極致に入り込む・・・。
    これでは目も当てられない。
    大事なことは、困難事例の検討、共有という目の前のものだけにとらわれないこと。
    「専門」という土俵に地域を乗せるのではなく、「地域」・「生活」という住民にとって身近なものに、専門職が赴いていく姿勢が大切なんです。
    「地域」という日常の輪の中に、専門職もごく普通にいる。
    元気なうちから地域のつながりの中に専門職が関わることのできる仕組みをどう構築していくことができるか?
    地域のつながりから、適切な時期に医療・保健・福祉専門職につながるシステムづくり、地域づくりの視点が今、求められているのです。
    地域を知る専門職が増えていくこと、地域で働く専門職が身近に見えるということが、地域に暮らす人たちの本当の意味での安心につながる。
    「この地域の専門職は、さまざまな専門の人たち同士がつながっているから、万が一のときも安心!」
    この実感を各地域でどう築いていくことができるのか?
    この議論と共通認識がなくて、本当の意味での地域ケア会議は機能していかないし、継続性もないと思っています。
    さりげない地域の輪に包まれて、「一人じゃぁない!」と思うことができる地域社会をどう考え、具体化していくのか?
    目の前のことだけではない視点を持ち合わなければと思っています。
    みま~もに関わる大学院生 なべちゃんが、みま~もくんプロフィールを作ってきてくれました。
             ↓
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