ある研究者による地域包括支援センターの社会福祉士職の実態をテーマにした論文を手にする機会があり、読ませていただいた。
地域包括支援センターの、おもに社会福祉士を対象に、高齢者虐待の対応に、困難を感じる援助者側の要因を把握するための研究で、
「虐待対応に困難を感じる地域包括支援センター社会福祉士の語りから、具体的な虐待対応の実態を把握し、虐待対応の負担感の軽減、ひいては、今後の地域包括支援センターの高齢者虐待の対応に向けた体制整備に資すること」
を目的としているものです。
全文は紹介することができないので、研究結果の見出し部分のみ抜粋する。
・満足に機能できない社会福祉士職
・介護予防ケアマネジメント業務の負担
・ジレンマに陥る社会福祉士職
・行政から孤立する社会福祉士職
・すれ違いの他職種・機関連携
・ケアマネージャーとの時間的齟齬(ケアマネージャーとの時間的齟齬とは、互いの勤務形態に違いがあるため、連絡調整に時間差があり、ケアマネージャーとの連携が不足してる実態を指すそうです)
・医療機関との認識的不一致
・警察との虐待対応への温度差
・行政との時間的齟齬(齟齬については、上記ケアマネージャーとの時間的齟齬の説明と同意)
・不完全なバックアップ体制と苦悩する社会福祉士職
・機能していない専門機関の相談
・研修参加の困難
・実効性のない研修内容
・相談相手を求める社会福祉士職
見出しを並べると、どのような内容かは察していただけると思います。
上記に挙げた様々な理由があって、包括支援センター社会福祉士職が本来の役割を発揮できていない。ストレスマネジメントやスーパーバイズ等、援助者を支える仕組みが必要であること、また、地域包括支援センターのバックアップ体制の必要性も論じてくださっている。
様々な立場、観点から、地域包括支援センターの現状を取り上げ、体制・環境整備に向けた提言を挙げてくれることについてはうれしい。
この見出しを見て、たしかに今の地域包括支援センターの現状を反映してくださっているとも感じます。
しかしあえて、でも・・・・、と言いたい。
この見出しのような現状があって、これを誰かがすべて整えてくれて、果たして状況が変わるのでしょうか?苦悩する社会福祉士職はいなくなるのでしょうか?
私も、地域包括支援センター社会福祉士の一員として言わせてもらえれば、たしかに大変です。日々業務に追われています。この研究者の見出しの内容すべてが、「そりゃぁ、ごもっとも」と思いますよ・・・。
でも、大変、大変と言っていても何も変わらないんですよね。しまいには、大変さを自分ができないことへの第一の理由にして自分を納得させてしまったりして・・・。
要は、このような状況を何とかしたい!と、自分たち自身がその思いにまずは立って、何かをしてみなくては何も変わらないということを言いたいんです!
たとえ、万が一体制や環境が100%満たされることになったとしても、この体制整備に向けて、自分が何も問題意識を持っていなければ、この恵まれた環境を生かすことなどできない。
体験を通さないことは、すべてが机上の空論。もしくは、すべてが他人事。
このような大変な状況の中で、たった一つでもいい、どんな小さなことだっていい、自分がそう思ったことで何か行動に移してみる。この行動こそが大切で、このような行動を積み重ねていく体験が、自分を成長させていくんだと思います。そして、同じように考えている人とつながりあうことが必ずできる。
ゆるやかな連携、さし障りのない関係・・・、たしかに居心地はいいかもしれませんが、現状を変えていく力にはなりません。
繰り返しますが、様々な立場、観点から、地域包括支援センターの現状を取り上げ、体制・環境整備に向けた提言を挙げてくれることについてはうれしい。
でも、そのような声を、変化を、より良い方向へ向けていくのは、自分たち地域包括支援センターで働いている自分たち自身なんです!