大田区発の地域包括ケアシステム-おおた地域見守りネットワーク(みま~も)

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2008.5.2おおた社会福祉士会 会報
  •  大田社会福祉士会会報に、高齢者見守りネットワークについて載せていただけることになり原稿を提出しました。この間ブログに書きためていたものを総括した内容のものです。
                    ↓
    「大田北高齢者見守りネットワーク発足にあたって」
     高齢者にとって、「住み慣れた地域で暮らし続けたい」という気持ちは、みなさんが感じている共通の想いでしょう。
     今、私たちが働いている大都市東京は、地域の特性、特色がどんどん薄らいで、どこの街も、どの地域も高齢者の人たちが、安心して暮らし続けていくことができる街にはなっていません。
     
     ある年齢までは、個人主義で隣近所との関わりもなく暮らすことは可能です。
     それは、会社や学校、子供等を通じて、どこかで誰かとつながっていて、かつ自分自身の都合に合わせて必要な人間関係を構築しているからです。
     個人のプライバシーを尊重し、煩わしい付き合いをしなくても、快適に過ごすことができます。
     「マンションはオートロック・カメラ付きインターフォンが当たり前。
     特にこれから高齢者となる世代、中でも男性は仕事中心の生活で地域との関係が希薄です。
     その様な人たちがいざ仕事を退職し、子どもたちも独立した。
     機会がどんどん減っていく。今までは、仕事での役割を生き甲斐にしてきた自分が、人との関わりがなくなるという疎外感は孤立していく要素として十分です。
     高齢化が進み、高齢者のひとり暮らし、夫婦のみ世帯が増加する中、「暮らしやすさとは何か」を考えることが重要です。
     人間は一人では生きていけません。孤立していくことほどつらいことはありません。自分に役割がある、必要としている人がいる、気にかけてくれる人がそばにいる。それは家族とは限らない。
     友人であり、隣人であり、専門職であり、この地域にいる人、そばにいる人でいい。暮らしやすさとは、住んでよかったと思える地域とは、自分を知っている人たち、気にかけてくれる人たちがいる場なのでしょう。 
     東京の高齢者人口は、10年後には全国でも群を抜き300万人を大きく超える見込みです。昨年12月東京都は「東京都地域ケア体制整備構想」を発表し、10年後の東京の目指すべき姿と、それに向けた政策展開の方向性を示しました。
     
     これをもとに、各地で「高齢者見守りネットワーク」を構築していく取り組みが行政を主体とし始まっています。
     この間、東京都内および周辺の自治体の取り組みの状況について伺う中で、大きく2つの形があり、どちらもそれぞれ問題を抱え難航している現状が見えてきました。
     
     一つは、行政主体によるトップダウン方式で地域包括支援センターの周知を図り、地域からの通報を促している自治体です。
     しかしこの方法では、他職種と地域住民の横のつながりがないため、包括支援センターの負担が増大するのみで、結果十分なフォローができない。また、地域包括支援センターが連携やネットワークの構築までは手が回らない、という問題が発生しています。
     そしてもう一つは、「見守る人」を地域で募り、「見守られたい人」への定期訪問を行っている自治体です。
     こちらの方法では、見守ってくれるボランティアは集まっても、見守られたいという人がいない・・・。
     確かに自分が見守られたいと手を挙げる人は、すでに自分でサービスを探し、利用しています。
     今、見守りが本当に必要な人は、自分では手が挙げられずにいる人、この人たちに早期に気づいて、専門職種につなげていく活動が今求められているのです。
     それを可能にするのは、地域全体で高齢者を見守ることの重要性を、一人でも多くの地域の人たち(高齢者自身を含め)が理解してくれることではないでしょうか。
     
     活気がある地域には、人と人との豊かな交流や連帯が息づいていくように思います。商店街が活気に満ち溢れていたら、地域が元気だったら、孤立していく高齢者に対して様々な関係性が生まれていくアプローチが可能になっていくでしょう。
     
     地域の様々な特性を活かした、地域住民主動の取り組みが中軸になっていきますが、行政の役割が減ることにはなりません。
     それは、画一的な取り組みに地域を当てはめていくようなものでなく、住民から生まれる地域福祉活動を積極的、安定的に続けられるための基盤整備、経済支援等弾力的な後方支援により、住民の地域福祉活動と、公的な福祉サービスとのつながりをよくしていくことに重点を置くことを望みます。
     
     この1月、私たちの地域の社会福祉士・サービス事業者・ケアマネージャー・弁護士をはじめ、NPO 団体、地域老舗百貨店「ダイシン」・平和島クアハウス等、様々な企業が協賛、また大田区・大森医師会・社会福祉協議会の後援のもと、「大田北高齢者見守りネットワークをつくる会」を発足しました。
     毎月第3土曜日ダイシン百貨店催事場を提供してもらい、「地域づくりセミナー」を開催します。
     「地域づくりセミナー」が地域住民と、地域で働く様々な専門職種との一ヶ月に一度の定期的な交流の場となることで、地域に暮らす人たちが気づいて、気軽に連絡・相談できるきっかけとなっていきます。
     この地域に根ざした老舗百貨店「ダイシン」がこの地域の地域活動の発信拠点になっていくことでしょう。平和島クアハウスは、「地域活動に取り組んだ方々が、気軽にみなさんで汗を流せる場を!」とセミナー参加者と、個人会員を対象に割引チケットを提供してくれました。
     
     この取り組みを通し、地域が、商店街が、暮らす人が、元気になっていくことが重要なのです。
     地域包括支援センターに求められている、「地域ネットワーク構築の中核機関」という機能は、大変大変という中からは、新しいものは何も生まれません。
     地域ネットワークの構築は、「地域包括支援センターの新たな仕事がまた増えた」ではなく、本来自分たちがやらなければならない大切なことを、大手を振って、今まで積み重ねてきた人たちとの関係を駆使して行える取り組みです。
     そして、私たちが対象としている高齢者が住み慣れた地域でいつまでも暮らせるよう地域ぐるみで応援していける・・・。こんなに心強いことはありません。
     
     「魅力を感じるもの・価値あるもの」にこそ、人は自分の持っている力を発揮したいと感じます。このような活動の特徴的なことは、明るさと、関わっている人たちの笑顔が満ち溢れていること。どんなにすばらしい活動でも、楽しくなければ長続きはしません。
     
     コミュニティーづくりは、個々の生活に犠牲を強いる取り組みでは継続できず、定着もしません。
     地域社会から「孤立」し、「孤独」になりがちな人が気を許す「つながり」にはお仕着せでないさりげなさが重要です。
     安否確認を「業」として行うことを否定はしませんが、何かの「ついで」に変わりはないか確認するといったさりげない、日常性を活かした人との関わりが気楽にできる関係づくりも必要ではないかと感じています。
     地域のネットワークづくりは、「高齢者を見守るため」という狭義にとらわれない知恵と工夫があっていいのです。
     ただ、伝え合う、手をさしのべるためには、相手に手が届く距離にいなければなりません。手が届く距離にいる人しか、手をさしのべることはできません。そして、手をさしのべることは「地域」でしかできないのです。
     
     大田社会福祉士のみなさん、地域に根ざしたみなさんの専門性と、連携が、今地域に求められています。ぜひこの取り組みに力を出していただければと思います。よろしくお願いいたします。

    たんぽぽ2

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