医療・介護に携わる者として、今の制度に対して、疑問や限界を感じることがある・・・。
2000年からスタートした介護保険制度は9年が経過し、一見定着していて、この制度を利用しながら生活している多くの高齢者にとっても不可欠のものとなっている。
しかし一方で、「介護予防」の導入による混乱、以前よりサービスが受けられない、介護の仕事では生活ができない・・・などの問題が生じてきている。
そもそも、介護保険制度は「介護の社会化」という理念のもとに、保険の原理に基づいて、利用者と、サービス提供事業所の間で契約を結ぶことによって、「利用者によるサービスの選択・決定」、「サービスの向上」、「多様な供給主体の参入」などが期待されました。
しかし、この原理・原則は、少なくとも現場では機能せず、むしろ介護現場の崩壊に向かっている。
主に家族が担ってきた介護に対して、社会全体で取り組むという命題は、9年経った今、介護給付費急増の中、様々な利用制限という形で形骸化してきている。
とくに、高齢化の進展による一人暮らし高齢者、高齢世帯の老老介護の問題に、介護保険制度が社会全体で取り組む試金石になっているかを考えれば、未だに家族に依存する在宅介護の現状は変わっていない・・・。
そもそも、競争原理を活かしながら、多様な供給主体を参入させ、利用者自ら選択する「選ぶ介護」が目指された・・・。たしかに措置時代に比べ、サービスを利用する人も増え、供給量も増えたように思える。
しかし、施設サービス・・・、中でも特養は、現在30万人以上の待機者がいると言われているが、この6年間でベッド数は9万床しか増えていない・・・。
また、在宅サービスにおいても、要介護認定で決定する介護度によって、サービスが制限され、本人・家族は一喜一憂。サービスを自らが決定できるものにはほど遠い・・・。
そもそも、介護保険制度が発足してから2年目ぐらいまで、国は盛んに「介護業界は21世紀の成長産業!」と、民間企業の参入を促す大宣伝を流布したが、結局この間、2回の介護報酬マイナス改定。
しかも、制度改正のたびに、法令遵守は年々厳しさを増し、事業所は徐々に撤退せざるを得なくなる。また、事業経営が苦しくなると、そのしわ寄せは人件費に跳ね返る。
今、介護事業における人材難が叫ばれ、外国人就労者や、派遣やリストラ社員の受け皿となるような期待論があるが、あまりにも短絡的で介護問題を軽視しているとしか思えない。「介護職における専門性」をどこまで軽視すれば気が済むのか!
志を持って介護業界に飛び込んでくる若者たちを、別の業界に行かざるを得ない状況・・・、資格取得者で、介護職に就いていない人を、この業界に呼び戻す、振り向かせる努力(対策)の方が先でしょう!!
今、続けている介護従事者は、厳しい報酬体系にもかかわらず、その中で「やりがい」をみつけ、仕事に向かっている・・・。しかし、「やりがい」に頼り、長期的・持続的な制度体系などあり得るはずがない。
すでに、4月からの改正は、期待とはほど遠いものでこれからの何年かを歩んでいく。介護現場の崩壊は待ったなしの時期に来ている。
有能な専門職が、私たちの地域にもたくさんいる・・・。もうこれ以上、スキルアップのための同じ介護業界への転職ならまだしも、違う業界へ行かざるを得ないという中で離れていくのを見たくない。
介護現場の崩壊が、現実のものにならないうちに、介護従事者、関係専門職の問題としてだけではなく、全ての人たちの介護に対する意識が、今、問われています。
そもそも、全ての人たちが、いつかは介護が必要となるんです!当事者となったとき、自分のことを理解してくれ、やりがいを持つ専門職に関わってほしいと思うでしょう・・・。質の高いサービスを受けたいと思うでしょう。
私もそうです・・・
「そもそも・・・」・・・で、議論をしなければ、今回の改正も含めた今までの流れが続くようでは、未来に希望が持てませんよ。
これからの30年、高齢化は進み、一人暮らし高齢者、高齢世帯は2倍を超える勢いで増え続けていくんです。みなさん、もう待ったなしです!!