大田区発の地域包括ケアシステム-おおた地域見守りネットワーク(みま~も)

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2009.2.23生命を、生きている今を、愛おしむ・・・
  •  当病院 院内学会公開シンポジウムを2月21日催しました。私が所属する医療福祉部が、8ヶ月の準備を重ねて取り組んだものです。
     医療福祉部は、「居宅介護支援事業所」・「訪問看護ステーション」・「医療福祉相談室」・「医療連携室」・そして我が「地域包括支援センター」の5部署で構成しています。
     シンポジウムには、患者のご家族として、Sさんの奥さんが参加してくれました。このシンポジウムを行うことを決めたとき、Sさんの奥さんに連絡をして趣旨を説明したところ、快く引き受けてくださいました。
     当日、シンポジウム前に事務所に訪れた奥さんは、Sさんの仏壇の写真を持ってきたくださいました。亡くなってすぐの仏壇の上には、Sさんの穏やかな笑顔の写真と、亡くなる前日に私がSさんに手渡したプチトマトが置いてありました・・・。
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     亡くなられてから1年半・・・、奥さんからは、当時の思いや心境が語られます。直後には語る気にならなかったことが、時を経て、今語れる、語りたい・・・。
     考えてみれば、当時の入院中の奥さんの思いを、本当の意味で話し合えるのは、家族や親族でなく、そこに関わった、奥さんに寄り添い刻々と変わる病状、精神的変化を見つめていた看護師や医師、ケアマネージャーだった私たちなのかもしれません・・・。
     「Sが亡くなって、本来ならそれで終わるはずの関係・・・。それが、このような関わりがあり、みなさんとこのように会い、話すことができる・・・。これもSが、自分をあなたたちとの関係をつなげ、今度私に何かあったらみなさんに妻を頼むと言ってくれているのかもしれません・・・。」と話す奥さん・・・。
     シンポジウムは、Sさんの奥さんのご協力のおかげで、大成功に終わりました。地域のみなさんもそうですが、私はこのSさんの奥さんの患者ご家族としての思いを、当病院の職員が聴くことができたことを本当に良かったと思っています。
     Sさんが入院中、病室の変更があった。そのときの思いを奥さんは伝えてくださった。移る病室は、重篤な、回復の見込みがない患者がいる病室・・・。ご家族としては、思っていても医療関係者には言い出しにくいことがあること・・・。
     Sさんが「どうしても家に帰りたい!」と興奮状態になり、自宅では奥さん一人だが、本人が望むようにしてあげようと思い、退院の手配を依頼する。だが、何かあったときの不安は奥さんが一番感じている。そのときに当時病棟師長だったTさんと話して、退院を踏みとどまる。
     患者、ご家族の心境は、日々変化していく。医療・介護関係者の一言が、何よりの心の支えになる時がある。
     大切な家族の生命を、必死に活きている今を、愛おしむからこそのとまどいや、不安を、私たち関係者が、日々どれだけ感じているのでしょう・・・?今回のSさんの奥さんの話を聴いて、生命の重みを感じずにはいられませんでした。
     これまでの医療は、病気を治すことに主眼を置く「治す医療」が中心でした。しかし、人類史上未曾有の高齢社会を迎える我が国において、持病を抱えながら、入退院を繰り返しながらも、生活する方が増加していくことでしょう・・・。
     病を抱えながら生活する患者と、その家族の生活を医療を通じて支援する「支える医療」という発想が、これからの医療には求められていくんです。
     「支える医療」の視点に立てば、自ずと「医療と介護の連携、病院と在宅を結ぶ・つなぐ機能」が必要となります。
     医療と介護を結ぶ、つなぐ・・・。これが地域に暮らす方たちが、病院にいても、自宅で暮らしていても、患者ではなく住民として暮らすことのできる安心につながっていくと思います。
     シンポジウム終了後、奥さんを、当時関わっていた医師・看護師・理学療法士・マッサージ師・ヘルパー・福祉用具担当者・ケアマネージャーたちが取り囲んでいました。
     この光景を見ていて、当病院が誇らしく思えたと同時に、このような支える医療を、全ての方たちに行っていかなくては・・・、という新たな思いに立ちました。
     Sさんの奥さんが帰る際、今年も、包括支援センター玄関前の「包括菜園」にプチトマトを実らせる約束をしました。Sさんが亡くなった夏には、真っ赤に熟したプチトマトを、Sさんの仏壇に供えてもらおうと思います。
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